大野修作(Syusaku Ohno、経歴1、経歴2、不正報道時52歳、現在約65歳、中国文学、関連)元京都女子大学文学部国文学科教授の論文4報に盗用が指摘され報道された[1]。4論文のうち1論文は取り下げ[1]。処分は確認できない。
京都女子大国文学科の調査によると同大発行の女子大国文「109号の論文など3論文で、他人の論文の一部を写した部分や注記の付け方が不適当だったり、他の研究者の見解との区別が不明確だったりしたところなどが確認され[1]」、大野修作は一部認め反省を表明した[1]。
また『109号の論文は99年に教授が京都大に提出した博士論文に含まれ、翌年博士号が授与された。論文を審査した京大名誉教授は「109号論文は引用を自分の考えのように書いており適切さを欠くが、論旨は元の論文と異なり、盗用とまではいえない。ただ他の論文は盗用と指摘されても仕方がなく、本人に注意した」と話した。[1]』
(1)盗用論文
大野修作 『東瀛詩選』の成立と広瀬旭荘
女子大国文 (127), 44-60, 2000-06
(2)盗用論文
大野修作 「歴代名画記」と「述書賦」
女子大国文 (109), p69-78, 1991-06
(3)博士論文
大野修作 書論を中心に見た中国文学芸術研究
京都大学 博士(文学) 乙第10285号 2000年1月24日授与、1999年12月9日審査合格、目次。
不正報道日 2003年5月23日
調査開始時期 2002年11月
不正の態様 詳細不明。概要は[1]を参照。
不正の発覚経緯 京都女子大学教員から盗用の指摘[1]。
不正の動機、原因 不明。ただ、[1]によるとは「国文学と中国文学では注釈の仕方が異なるので(盗用かどうかは)一概にはいえない」と言及。
博士論文の目次によると盗用論文(2)は博士論文の第4章。審査員は上のように述べたが、論旨が元論文と異なるから盗用でないというのは不当な判断。論旨が元論文と異なるという事は盗用の判断と関係ないからだ。
私の知る限り、京大で学位取り消しの例はない。世間ではOの博士論文の不正は学位取り消しが当然だと騒いだ。大野修作の盗用は本論の一部。論旨に影響しないから取り消さないという事かもしれないが、それが適当かは詳細を見ないとわからない。盗用の分量が多ければ学位取り消しが相当かもしれない。報道ではそこが明確でなかったが、京大や京都女子大が大事を避けるため詳細を明らかにしなかったのかもしれない。
[1]では本件を「盗用か」と報じたが、不適切な引用や注記等を大野修作が認めた事や一部の論文の取り下げから判断すると盗用があったと言える。博士論文の審査員も一部の論文では盗用と指摘されても仕方ないと述べた[1]。従って本稿では本件を盗用と扱った。
京都女子大学は本件をきちんと盗用と認定し、懲戒処分を行う必要があったのにそれを確認できない。もし盗用の認定を避け、処分しなかった又は不当に甘い処分だったなら不適切だ。なお、大野修作は書法漢学研究会理事長を務めたという。
研究不正の改善はもちろんのこと公正な調査や相当な処分が行われる事を期待する。
参考
[1]朝日新聞 2003.5.23 直接的にはリンク先。