学術誌に出される訂正、撤回理由には不正をごまかすためのものがあり信憑性が低い。
(1)東大分生研事件
東大分生研K元教授らが発表したネイチャーの論文に大量のデータ流用が発覚したが、当初ただの過失による訂正(写し)で済まされた。後に東大に告発され、不正と判明。最終的に撤回(写し)になった。超一流誌のネイチャーでさえ、被疑者の過失という弁明を盲目的に信用し、過失で処理した。これは不正を隠蔽し撤回を回避するために加藤茂明氏が実験ノートや画像の捏造を指示して実行させたものと正式に認定された。
(2)小保方晴子氏、C.バカンティ氏らのTissue Engineering誌の訂正
小保方晴子氏、C.バカンティ氏らのTissue Engineering誌の論文は過失による訂正が公表された。これを理由に早大調査委はTE誌と小保方博士論文の関連部分の不正を調べなかった。早大教員有志が明確な改ざん故に調査要と提言。
(3)井上明久氏の訂正
日本金属学会欧文誌に載った井上明久氏らの合金の質量が質量保存の法則を破る値になっていた件について同誌編集委員会は井上明久氏らの過失によるErratumで処理[1]。実験ノートや試料は天津港でコンテナごと海に落ちてないと弁明した。東北大学は同誌が過失による訂正で済ませたことを理由に告発を不受理にした[1]。
(4)名古屋市立大学医学系事件
岡嶋研二氏、原田直明氏は多数の画像流用を国際会議の練習用に仮作成した資料を誤って投稿したと学術誌や調査委員会に弁明した(関連)。調査委員会は一蹴したが学術誌はこの理由を公式に公告した。
(5)小室一成氏、南野徹氏らの事件
小室一成氏や南野徹氏らのネイチャー論文は大量訂正、生データなし、実験手順すら変更。非常に強引に訂正で済ませた。加藤茂明氏らと同じく捏造、改ざんの隠蔽をしたといってよい。ネイチャー編集部も本当は不正とわかっていたはず。
その他 - 不可解な弁明を調査委員会が認めた例
(6)小保方晴子氏の博士論文の早大調査委員会
下書きを誤って製本として提出したという小保方晴子氏の弁明を認め、バイオ系会社HPからの画像剽窃・捏造、レファレンスの剽窃を過失で処理した。
(7)独協医大の二重投稿判断
独協医大は「定義上の不正行為(捏造、改ざん、盗用)に当てはまらない。しかも研究者によれば、いずれも後に投稿した一方の学術誌を研究会の抄録であると誤認していたため投稿したものであり、故意によるものではなかった。」とし二重投稿を不正としなかった。
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どれも不可解な弁明だが、学術誌や調査委員会は正式に弁明を受け入れた。調査委員会は黒を白と判断したものだが、学術誌は調査をしないので基本的には著者の弁明を信用して過失による訂正で済ませたに過ぎない。つまり、訂正、撤回公告で過失による訂正と公表されていても信憑性が低い。過失による撤回の割合は学術誌撤回公告の方が米国公正局などの結果に基づいた調査に比べて1.5倍から3倍高いことがわかったという。井上明久氏、加藤茂明氏、南野徹氏、小室一成氏、岡嶋研二氏、原田直明氏、C.バカンティ氏らのように訂正、撤回公告を不正の隠蔽に使っているのも珍しくない。
不正行為対応のガイドライン改訂が検討されているが、このことを考慮し東北大学や早稲田大学のように疑義を調査しなかったり、黒を白と判断することがないような制度にしなければならない。
参考
[1]このサイトの最新情報(37)2010年1月11日。