私は研究不正の事例をみて、研究成果を作ってしまうような完全な虚構論文は余りないように思う。例えばSTAP論文やディオバン事件の論文などが完全な虚構論文で、主要な成果を捏造、改ざんで作ってしまったものだ。
昔の例では白毛のマウスの一部を黒く塗って、拒絶反応なしの皮膚移植に成功したと成果を捏造したサマーリン事件や発がんメカニズムのカスケード理論を実証する新しいリン酸酵素と合うような分子量を持つ別な物質を電気泳動にかけてカスケード理論を捏造したスペクター事件などがある。
どの事件も論文が全体的に虚構で態様も非常に悪質。サマーリンの捏造は単純な手口で不正の再発防止のためにはあまり参考にならないかもしれない。O 30代女性研究者の事件もES細胞のすり替え又は混入という手口で、著名な研究者が何人もかかわっていたのになぜ見抜けなかったのかは現在でも疑問である。
ディオバン事件は数値を操作したもので統計結果の異常な一致や不合理な結果などから告発され、調査で改ざんが発覚した。告発したのは東大と京大の医師。おそらく専門家でないと見抜くのは難しかったと思う。例えば血中の電解質が低すぎたり高すぎたりして不合理だというのは非専門家だとわからないだろう。ディオバン事件は専門家だから発見できた不正だ。
藤井善隆の世界記録捏造もあたかも小説を書くように虚構論文を発表し続けたと認定された。これも統計的に異常に正確だという事で告発され、捏造が認定された。告発したのは海外の学会の連名だったと思う。20年以上にわたって170編以上の論文を捏造した。数値系の捏造、改ざんを見抜くのが難しいという要因もあったかもしれないが、これほど大量かつ長期間の捏造が見抜かれなかったのは周りが見て見ぬふりをしていた事も要因かもしれない。
虚構論文は非常に悪質なため、上の事件は不正行為者が解雇か辞職した。
またどの虚構も手口が非常に悪質。マウスの毛を黒く塗る、ES細胞を混入させる、製薬会社や研究者にとって都合のよい結果が出るように数値を操作するといった手口は倫理意識が完全に欠如していると言わざるを得ない。懲戒解雇は当然だし信用が地に落ちてしまう。
研究成果全体が虚構というのは余りなく、一部のデータを捏造、改ざんしてしまうようなものが多いと思う。さすがに研究成果全体が虚構という論文を発表してしまうような非常に悪質な人間はなかなかいないという事だろう。
ディオバン事件が甚大な経済的被害を出したように社会悪といえる虚構論文は絶対に発表してはならない。