鈴木洋子(Yoko Suzuki、すずき ようこ、経歴1、2、1946年頃生まれ、不正行為時 約69歳)昭和女子大学特命教授が元指導学生の修士論文を盗用して論文を発表し辞職したことがわかった。昭和女子大学は不正行為者の氏名や所属を公表していない。これはガイドライン違反だ。不正行為者は2016年9月30日付で依願退職したため処分なし。盗用論文は平成27年(2015年)に発表され、既に取り下げられたという。分野は言語学。
文科省の公表によると発生原因は「同教授個人の引用ルールや研究倫理の基本に関する認識不足、学問研究の基盤である正確さや厳密さに対する認識の欠如により引き起こされた」という。
しかも『昭和女子大学では「研究活動上の不正行為の防止及び対応に関する規程」を平成27年4月1日から施行し、学内ホームページ上に規程を掲載のうえ会議において所属教員に周知しているものの、同教授が論文を発表した当時は規程制定前であり不正防止の体制が十分に整備されていなかった。』(文科省公表より)という。
文科省ガイドラインは平成18年から施行されている。平成27年4月1日から施行したというのは遅すぎる。大阪産業大学の盗用等の事件の時もそうだったが、研究不正の規定施行が遅すぎる研究機関がある。STAP事件等で研究倫理が強く叫ばれるようになったが現在でも研究不正の対応規程を設けていない研究機関がある。
このような研究機関のやる気やモラルのない態度は残念だ。不都合だと思っていつまでも規定を設けず、改善しようとせず、やる気やモラルのない研究機関は非常に問題だ。補助金削減など制裁を与えるべきだ。
それに昭和女子大学は不正行為者の氏名等の公表や調査概要の公表といったガイドラインに示された規定に違反した。調査概要を自主的に公表する義務があるが、文科省に報告しただけで、現在の公表は文科省が制度又は規定に基づいて公表したに過ぎない。辞職しても懲戒解雇相当などの処分をしなければならなかったのにしなかった。
昭和女子大学は研究公正に対する意識やモラルが低く、STAP事件等の影響で研究倫理の改善が学術界で強く叫ばれても、対岸の火事にすぎないと甘く考えているのだろう。発生要因にも体制の不備が言及されたが、このようなモラルややる気のない態度は研究不正を誘発し非常に問題である。金子朝子学長や坂東眞理子理事長は猛省し直ちに改善を図るべきだ。
ところで、同大言語教育・コミュニケーション専攻の2016年3月15日時点での教員一覧の特命教授に鈴木洋子がいるが、現在教員一覧で調べても出ない。同大の2016年3~8月頃の教員一覧を確認したが特命教授自体が3人程度しかおらず、言語学の特命教授で現在同大の教員一覧で出ない人は鈴木洋子(関連)だけだった。関連(写し1、写し2)。修士論文一覧。
鈴木洋子 "海外につながる児童生徒の言語教育 ―日本における事例から―" 日本語教育連絡会議論文集 27、p123-133、2015年3月26日発行.
盗用元の論文
金 ボラ 『インターナショナルスクールに通う児童の語彙力と親の言語教育観』 昭和女子大学 修士論文(未刊) 2014
金 ボラは韓国人で京都大学博士課程に編入し現在ドクターの院生。
日本語教育連絡会議論文集Vol27の公式ページにいくと盗用論文だけPDFへのリンクがはずされ、トップページにリンクされている(写し1、写し2)。どうもこれが撤回したという事のようだ。撤回公告は全く見つけられない。前から思っている事だが、文系の和文誌は訂正、撤回公告を出すという当たり前の事さえやっていない事が珍しくない。さらに訂正、撤回さえ全くやっていない学術誌も珍しくない。ヒューマンエラーは必ずあるのに何十年と出版して訂正、撤回が全くない事はあり得ない。文系の和文誌は誰も読まなくて誤り等を誰も指摘しないという要因もあるかもしれないが、出版倫理を無視している、やる気がない事が訂正、撤回が行われない主な原因だ。不都合な事だと思って放置し、最低限度の出版倫理さえ守ろうせず好き勝手やっているのは非常に不適切だ。COPEのガイドライン等をきちんと遵守すべきだ。
修士論文から盗用した事件は昨年の瀧川薫(Kaoru Takigawa、経歴1(写し)、経歴2(写し)、他)元滋賀医科大学の盗用、改ざん事件も同様。瀧川薫は懲戒解雇。このような事で研究者生命を絶たれるのは非常に痛い。
今回の盗用事件は不正行為者の研究倫理の基本に対する認識不足等が原因と言及された。きちんと研究倫理を学ぶ事は重要である。