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余りのある割り算の答えは矛盾が生じて不合理か?

A君 「 8 ÷ 0.3  = 26 余り 2」
先生 「不正解。余りが割る数より大きかったら、0.3を1単位としてもっと分けられるでしょ。余りは割る数より小さくなると授業で学んだよね。」
A君 「それでは答えは8 ÷ 0.3 = 26 余り 0.2 ですか?」
先生 「正解。その通りだよ。」
A君 「 8 ÷ 0.3 = (8×10)÷(0.3×10) = 80 ÷  3 = 26 余り 2 ではないんですか?等式で結ばれてるのだから正解ですよね?」
先生 「不正解だよ。割り算の余りは割る数と割られる数を定数倍した計算結果と異なるんだよ。」
A君 「でも、8 ÷ 0.3 = (8×10)÷(0.3×10) = 80 ÷  3 ですよね。 8 ÷ 0.3 = 26 余り 0.2 、80 ÷  3 = 26 余り 2 なら 26 余り 0.2 = 26 余り 2 ということになってしまいますね。これは矛盾していて不合理ではないですか?」

こんな疑問を持つ小学生がいるだろうか。8 ÷ 0.3 などの商を出す時に 80 ÷ 3 に変更して計算するのはよく行われる。小学生がよく間違えるのは余りの2をそのまま答えにしまう場合だ。余りが割る数より小さくなる事を忘れてしまったのだ。上の例では本来は3 で割ったのではなく0.3で割ったのだから余りは0.3より小さくなる。80÷3 は本来の計算から割る数と割られる数を共に10倍したので、本来の余りにするには2を10で割らなければならない。即ち0.2が本来の余りだ。

数式で一般的に説明すると次のとおり。

a ÷ b の計算では a = b × c + d となる時、c を商、 d を余りとし、a ÷ b = c 余り d とした。割る数と割られる数を共にz倍(z ≠ 0)した場合、za ÷ zb の結果は a = b × c + d より za = zb × c + zd だから、za ÷ zb = c 余り zd となる。本来の計算から割る数と割られる数をz倍すると商は変わらないが、余りがz倍になるので、本来の余りに戻すにはzで割らなければならない。A君はこの操作をしなかった。その理由はa ÷ b =za ÷ zb だから、za ÷ zb の商と余りも答えになると誤解した事が原因だった。

説明したとおり、割る数と割られる数をz倍すると余りもz倍された異なる数になってしまう。A君はさらに、

a ÷ b = za ÷ ab  ・・・ (1)
a ÷ b = c 余り d  ・・・ (2)
za ÷ zb = c 余り zd  ・・・ (3)

(1)、(2)、(3) より c 余り d = c  余り zd  となってしまって、c 余り d ≠ c  余り zd だから矛盾して不合理ではないかと疑問を持った。

これについて皆さんはどう思いますか?上の計算の例なら「26 余り 0.2 = 26 余り 2 」となってしまって不合理だと思いますか?

もちろんこれはA君の考えが間違っています。上で説明した通り、割り算の余りは割る数と割られる数をz倍すると余りはz倍になります。a ÷ b = c 余り d の「余り」はあくまでa ÷ bの「余り」で、za ÷ zb = c 余り zd の「余り」はあくまでza ÷ zb の「余り」です。同じ「余り」ではないのです。「(1)、(2)、(3) より c 余り d = c  余り zd 」とするから間違うんですね。正確には「(1)、(2)、(3) より c 余り d (ただし、余りはa ÷ bの結果)= c  余り zd (ただし、余りはza ÷ zbの結果)」です。左辺と右辺の等号は成立します。

A君 「どうしてこれが成り立つんですか?余りが変わってるのに等号が成立するなんて信じられません。」

と言うかもしれませんね。それでは割り算の答えの余り表記をやめて有理数表記に直してみましょう。

c 余り d (ただし、余りはa ÷ bの結果)は、割る数がbだから、有理数表記にするとc + d/b  ・・・ (4)
c  余り zd (ただし、余りはza ÷ zbの結果)は、割る数がzbだから、有利数表記にすると c + zd / zb  ・・・(5)

c + zd / zb  = c + d / b だから、(4)=(5)、すなわち「c 余り d (ただし、余りはa ÷ bの結果)= c  余り zd (ただし、余りはza ÷ zbの結果)」です。a÷b = za ÷ zbだから当然ですね。

余り表記、有理数表記は割り算の答えを表す時の考え方の違いです。例えば上の8 ÷ 0.3 を具体的な問題で説明すると、「りんごが8個ある。1袋に0.3個入れる時、何袋できるか?」という問題で、26袋入れると残りが0.2個になり、もう1袋に0.3個入れられないから、「余り 0.2」 とし、答えを「26袋、余り0.2個」とするのが、余り表記。「1袋に0.2個入れよう。それは1袋0.3個の袋を0.2 / 0.3 = 2 /3に分割したものだと考えよう。答えは 26 +0.2 / 0.3 = 26 + 2 / 3 = 80 / 3 袋」、これが有理数表記。答えを表す時の考え方が違います。

80 ÷ 3は同様に考えると、余り表記の場合は「26袋、余り2個」、有理数表記は「26 + 2 / 3 = 80 / 3 袋」となる。8 ÷ 0.3 と80 ÷ 3は答えの余り表記は一見違って見えるが、有理数表記に直すとどちらも同じだ。

A君 「割り算の答えは色々な表し方があるけど、みんな同じなんですね。」

というかもしれない。

先生 「そうだね。例えば1 / 3 だって、10 / 30、6 / 18 など色々な表し方があるけど、1 / 3 = 10 / 30 = 6 / 18 でしょ。同等だけど表記が違うケースはいろいろあるよ。」

A君 「では、2 ÷ 6 = 2 / 6 とか、”8 ÷ 0.3 の商と余りを求めよ。”という問題で、 26  余り 2 (ただし、余りは80 ÷ 3の結果)と答案に書いても正解ですよね。数学的に同等なんだから。私の最初の答え、8 ÷ 0.3  = 26 余り 2 だって余りを80 ÷ 3の結果と解釈してあげれば数学的に同等ですよね。」

先生 「だめだよ。数学的に同等でも問題の要求に合った適切な表記でないといけない。答えを有理数表記する時は既約分数で書くのが慣習だよ。甘く採点してもらえれば正解又は部分点になるかもしれないけど、確実に正解としたいなら既約分数の表記にしないといけない。”8 ÷ 0.3 の商と余りを求めよ。” という問題の場合は、きちんと”8 ÷ 0.3 の商と余りを求めよ。” と書いてあるでしょ。80 ÷ 3 の余りを書くのは問題の要求に反しているね。」

A君 「結局私の最初の答えは不正解なんですね。」

先生 「その通り。仕方ないね。」

小学生にこんな疑問を持たれると先生は説明が大変だ。こんな疑問を持つ小学生はいるのだろうか。


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