ランセットとNEJM(New England Journal of Medicine)に掲載されたコロナウイルス関係の2論文がデータの捏造、改ざんの疑いで撤回された。
ランセットとNEJMは医学系の超一流誌で影響は大きい。しかもコロナウイルス関係だからもっと影響は大きい。こういう論文で捏造、改ざんをするのは甚大な損害が出かねない。医学系は捏造、改ざんが多いが、コロナでもやっちまうんだなー。
医学や経済学などの実社会に対して大きな影響のある研究に対して不正があると甚大な損害が出かねず極めて悪質である。
医学系の前例だとディオバン事件や見立病院・弘前大学等事件。英国のアンドリュー・ウェイクフィールドのMMR混合ワクチンの捏造も有名。これらは実社会でも甚大な損害を出した事件で大きく報じられた。ただし、見立病院・弘前大学などの事件は日本であまり報じられなかった。
経済学の前例だとO(国立環境研究所)、B(大阪大学)の事件。社会に対して甚大な損害が出かねないのに削減率について故意に虚偽記載し、政策の定量評価が主旨なのに嘘の情報に基づいて全面的に変更し結論さえ書き替える大量訂正(写し)で不正行為を隠蔽したのは極めて悪質。Bはこんな事をすれば自分のキャリアや大阪大学名誉教授としての肩書を台無しにするとわかっていたと思うがOに巻き込まれた。自己保身のためにこのような事をするのは極めて悪質だし、主旨・結論が間違っていたのに論文を撤回していない点も悪質、大量訂正(写し)で他の論文等10報以上に主旨・結論の誤りが生じ撤回相当になっている点でも非常に悪影響が大きい。こういう点があった事が上の医学系の前例とは違う。O(国立環境研究所)、B(大阪大学)事件は研究公正や社会の悪影響を避けるために論文を必ず撤回しなければならない。不正を不正で隠蔽するのは特に悪質とされ、K事件とT事件ではそれが致命傷となり懲戒解雇となった。
今回のコロナの捏造、改ざんを見ても、このような研究不正は後を絶たない。動機は研究者、医者、企業の倫理意識の欠如、金銭、出世、名誉欲などが考えられるが、同じ事が何度も繰り返されるのは再発防止が機能していないという事かもしれない。
日本だと規則の無視や調査をきちんと行わないケースも多く、第三者機関や実効性のある規則の制定も必要だ。
今回の件はサージスフィア社という謎の企業の関与で不正が起きてしまったと疑われている。査読を通ってしまったが、PubPeerなどの指摘で早期に論文が撤回され被害の縮小につながった。ディオバン事件の時もノバルティス社が関与し、STAP事件の時もクラウド査読などで早期の論文撤回などに貢献した。今は匿名者を特定するための法案を作っているが、学術では匿名者の貢献が大きい事もあり、名誉棄損の指摘などを利用して言論弾圧やハラスメントをする動きが起きないか心配している。顕名通報をすると不当なハラスメントがよく起きる。
今回の件はコロナの大影響のために査読をはやく通ったという要因はあったかもしれないが、もともと学術誌の査読は研究不正を見抜く上でほとんど機能していない事は前例が何度も証明している。サージスフィア社のデータを使ったプレプリントの捏造も指摘され、今の医学系ではプレプリントでも参考にされるため捏造を防ぐ事が難しいという考えもあるかもしれない。私は有力雑誌でも何度も捏造論文を出したし、悪質な大量訂正(写し)を出すのだから、今の査読は捏造等を防ぐために機能していないと思う。
一方査読付き論文で発表する前は捏造、改ざんは問題にならない等と明言する某有名教授もいるが、こういう主張は論外であり、キャリアや実績が十分ある者でも極めて初歩的なレベルから研究倫理をわかっていない事があり注意が必要だ。こんなレベルで学生を指導していたら悪影響が大きい。
サージスフィア社は元データの提供を拒んでいるという。こういうケースは捏造と言われても仕方ない。日本でもコロナウイルス関係でテレビによく出ている岡田晴恵は筆頭著者の論文について捏造等を疑われ、生データ等の提出を拒否し現在も沈黙を続けている。生データの提出などがない事に対して元感染研所長は捏造や改ざんがあったと判断せざるを得ないと言及した。
思えばO(国立環境研究所)、B(大阪大学)の事件も同様だ。捏造、改ざんを疑われたら生データ等を出して研究の正当性を弁明するのが基本で、それを行えば済む。しかし、OとBは故意に嘘を記載して削減率を変更し、嘘の情報に基づいた分析結果に全面的に変更し、結論、主旨さえ変更した。全面的に誤り、主旨や結論さえ誤っていた場合は必ず撤回だが、出版倫理が欠如していたため大量訂正(写し)が行われた。
通常は論文の結論や全面的な誤りがあれば必ず撤回になるので、ほとんどの研究者は何が何でも避けようとするが、OとBは上のような懲戒解雇になってもおかしくない大きな不正行為をやってまで全分析結果と結論・主旨の誤りを公表した。しかも他の論文等10報以上も全分析結果、結論・主旨の誤りが発生し撤回相当になる甚大な悪影響が生じるものだ。生データやシミュレーションの設定を示して論文の正当性を示せば、こんな非常に悪質な大量訂正(写し)をする必要はなかったのに甚大な損害を出してでも大量訂正を行ったのは余りに不自然すぎる。
こういうのは生データやシミュレーションの設定を見せられなかったと強く示唆するものである。
コロナ関係の論文撤回は大事件に発展するだろう。他にも同様に非常に悪質な事件があるので、そちらも迅速かつ公正な調査が必要である。