Quantcast
Channel: 世界変動展望
Viewing all articles
Browse latest Browse all 2104

研究不正を刑事罰化し警察が捜査すべきか?

$
0
0

「ネカトを刑法犯とする」という白楽ロックビル先生の文献で研究不正を刑事罰化する世界の新しい動向が紹介された。Research Ethicsの"Should research misconduct be criminalized ?"も紹介された。

研究不正を刑事罰化する事は白楽先生が前に提言された。日本だとディオバン事件の時に特捜が捜査して刑事事件化したのが捏造、改ざんについては唯一の事件だったと思う。今のところ無罪になっているが、特殊な捜査で改ざんの実行者をS氏と断定できた点は任意調査で実現できなかった事だし、裁判をみると通常の調査では明らかにならないと思うような事実も証言され、刑事事件の捜査や裁判での真相究明の力は任意調査よりずっと高いと思った。

STAP細胞事件の時も最終的にはES細胞の混入者は公式に認定されなかった。もし警察が捜査していたら違っていたかもしれない。

研究不正を刑事事件化する大きなメリットは強制捜査力や真相究明力が高い事だ。一方でルイセンコ事件などに代表されるように学術追究を阻害する点は懸念される事かもしれない。ただ、それは刑事訴訟法と同様に法律に基づいて捜査手続きを公正に行うような仕組みを設けるなど公正手続きの保証はいくつかの方法である程度実現できるだろう。刑事事件でも手続法である刑訴法がしっかりしている事で人権侵害を抑止するようになっている。日本も諸外国も同様。ルイセンコ事件の悪例だけを出して国家が研究不正を取り締まる事の問題を批判する者もいるが、それだけで批判するのは単純すぎる。

研究不正を刑事事件化する事の問題の一つは警察がどこまで研究不正事件を真面目に扱うのか、告発などがきちんと適切に受理されるのかという事だ。殺人事件などの大事件なら捜査している事が多いが、小さい事件で警察がきちんと捜査しなかったり、告発を受理しないケースはたくさんある。警察関係者には悪いかもしれないが、それが現状。

研究不正はSTAP細胞事件やディオバン事件などの大事件は少数で大部分は殺人事件などのような重大事件でないだろう。それに専門性の高い事件だから非専門家である警察がまともに取り扱おうとするのか疑問がある。そもそも研究不正の問題を取り扱う能力があるのかも疑問だ。

研究不正を刑法犯として定め、刑事訴訟法のような手続法も学術追究を不当に害さないように定めるのはいいかもしれない。実際の運用ではSTAP事件のような大事件だけ捜査するというような扱いになるかもしれない。

私は学術会議などに研究公正のための専門機関をきちんと設けて、ある程度強制調査権もあるような法整備があってもいいのではないかと思う。


Viewing all articles
Browse latest Browse all 2104

Trending Articles