東山魁夷や平山郁夫といった日本画の巨匠の贋作が流通し刑事事件となった(写し)。版画工房が勝手に作ってしまった。確かに贋作だ。
私はこの手の事件は少し違和感もある。贋作とは何かというと著作権者の許可を得ないで勝手に作った作品のことだ。第三者が全て作った作品でも許可を得れば贋作にならない。実際にそのようなものはよく流通している。
東山魁夷の作品は非常に人気が高く、作者が亡くなった後も復刻版版画としてたくさん刷られて売られている。12号くらいで50万円くらい?たくさん刷っても、それだけの値段がつくのだから、よほど人気があるのだろう。
作者が亡くなった後に作られたのだから、完全に版画工房の人たちが作っていて作者は全く関与していない。たぶん奥さんだったと思うが、作者が亡くなった後に著作権者の承諾を得て版画工房の人たちが版画を作って「東山魁夷 作」と作者の名称をつけて販売販売しているのだ。作者が生存している時も大部分は版画工房の人が作っていて、作者は監修であって、あまり関与していない事も多い。最後にサインするだけのケースもあるかもしれない。
特に作者が亡くなった後に作られた版画は全て第三者が作ったもので、その点では贋作と変わらない。「東山魁夷」などという名称で販売されているので、あたかも巨匠が作ったかのような錯覚を覚える人はいるかもしれないが、贋作を合法的に売っているようなもので、全て第三者が作った作品という点では贋作と同じだ。それを数十万円という高額な費用を出して購入しありがたがる購買者がいるのだから、少し不思議な気もする。中身は贋作と同じなんだよ?
例えば何でも鑑定団で贋作に対して1000円とかの値段がつく事があるが、中身は全く同じなのに売り物にならない又は極めて安い値段の作品が作者ではない相続人の許可で数十万円になるんだから不思議な感じがする。
著作権が切れて自由に作れるようになれば、復刻版版画の価値もなくなるのかもしれない。販売員が版画は数が限定され印刷物じゃないと主張する事もあるが、数を限定しても実質印刷物と変わらないような扱いになるのかもしれない。
今回は許可なく版画を作って販売したので刑事事件になってしまったが、現在の復刻版版画だって贋作の合法販売みたいなもので、知らない人が「東山魁夷 作」なんて札をみて購入したけど、実際は東山魁夷は全く関与せず、第三者が作ったものを作家本人の作ったものと誤解して購入してしまったなんてこともあるかもしれない。ちょっと詐欺的。
巨匠の本画は一般人では購入できる値段ではない。平山郁夫なら生前でも1号あたり500万円。版画は巨匠の作品を廉価な値段で購入できるためのよい手段だが、本画と印刷物の中間の扱いで、復刻版版画は贋作の合法販売ともいえるかもしれない。どういうものを購入するかは購入者の希望次第だ。