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一関市博物館、平成25年度和算に挑戦上級問題の解答例

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定理2は『和算の図形公式-算法助術-』(中村信弥 編著)公式28によった。
「定理2」の部分はオリジナルでは「公式28」となっており、解答の記述の都合で修正した。

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図1 定理2の図の拡大
『和算の図形公式-算法助術-』(中村信弥 編著)公式28 より

定理2を知っていれば簡単な問題です。知らなくても数値計算を使えば計算は複雑ではありません[1]。手計算だと少し煩雑です[1]。

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前の記事のコメントで述べたように上級は下の星円の2つの接点を結んだ直線と空円と下の星円の中心を結んだ直線が同一であることを前提に出題していますが、上の図で示したように必ずしもそうなるわけではありません。問題の図から直感的に同一直線になることは予想できますが、上の図のような状態を否定することはできません。よって正しい数学的考察としては上の状態も含めて考察しなければなりませんが、同一直線でないケースは解けません。その結論に至るまでには結構複雑で労力のかかる計算が必要です。答案は簡潔ですが、裏では無駄な計算をかなりやりました。

考察の結果同一直線にならない場合は問題が解けないことがわかって、出題側は下の星円の2つの接点を結んだ直線と空円と下の星円の中心を結んだ直線が同一であることを前提に出題したと結論しましたが、私ははっきりいって不快です。出題側は図からわかるつもりで出題したのでしょうが、上で述べたように数学的には上の図の状態も否定できないわけですから、これを前提条件にしているなら図から明確に読み取れない条件は問題文できちんと明示すべきです。「上級の出題内容も不十分」と前に言いましたが、それはこの点です

江戸時代はこんな不十分な出題だったのかもしれませんが、図から明確に読み取れない条件で出題するのは不適切と言わざるを得ません。こういう出題をすると適切な考察で問題を解こうとする者は無駄な労力や時間を費やすことになります。「当時の和算はこんなもので、それを忠実に体験してもらうためにこのような出題にした。」と主張されても、そんな考えは通用しません。

これも改善するように一関市博物館に要求しましたが、中級の問題点と同じくきちんと改善するかは同館に任せる他ありません。

参考
[1]定理2を知らないと本文の解答の「定理2から・・・」以降の部分は次のようになります。A,Bは上の解答の点ではなく図1のA,Bです。

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高校生は二分法等を学びますから、?を数値計算で解くなら簡単です。これだとr=1, 2.780・・・が出ます。後は上で述べた根拠でr=1のみ解になります。直感的にr=1が解になるとわかるのでr=1を?に代入して等式の成立を確認し、r=1とする方法もあると思いますが、r≒2.78も解なのでこれを否定せずr=1とするのは完全ではありません。試験なら減点になると思いますが、出題側の採点ではこの程度なら正解になると推測します。

手計算だけで解くなら上の定理2を使った方法やその証明に準拠した方法が一例です。手計算と数値計算を両方使うなら?を?に変形する方法もあります。これは少し煩雑です。?のr=1以外の解は通常数値計算で出すので、r=1以外の解の否定のためには結局通常は数値計算をすることになります。解析的にr=1を出せるのはいいですが、?を数値的に解いた方が簡潔でいいと思います。3次方程式の解の公式を使うなら別ですが非常に煩雑です。

注意してほしいのは?から?の変形は同値変形ではないので?の解以外も?の解に含まれるということです。

例えば

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この計算は?から?が同値変形ではありません。?の解は?ですが、?の解?にはx=1だけでなく-1/3も含まれています。必要条件的な変形の場合は元の方程式の解でないものも出てくるので大元の方程式に代入して解かどうか確認する必要があります。


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