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研究不正の故意(悪意)、改ざんの意味

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理研は小保方晴子氏の不服申立てを斥けた[1]。その判断書の中で故意(悪意)の解釈があり、後の研究不正事件の規範となり得るので紹介する[1]。

理研調査委員会は悪意を『「悪意」とは、客観的、外形的に研究不正とされる捏造、改ざん又は盗用の類型に該当する事実に対する認識をいうものと解する。したがって、規程によれば、研究不正は、この認識のある態様のものについてこれを研究不正とすることとなる。悪意を害意など、上記の認識を越えた加害目的に類する強い意図と解すると、そのような強い意図がある場合のみに規程の対象とすることになるが、その結果が、研究論文等の信頼性を担保するという規程制定の目的に反することは明らかである。とすれば、「悪意」とは、国語辞典などに掲載されている法律用語としての「知っていること」の意であり、故意と同義のものと解されることになる。[1]』

つまり故意(悪意)は研究不正行為の客観面に対する認識だけで足り、道徳的善悪は関係ない。小保方晴子氏は電気泳動画像の切り貼りを悪いと知らなかった、見やすくするのが目的で騙すつもりでないので悪意はないと主張したが通用しなかった。画像を切り貼り、引き伸ばしし正しい状態を変更したことを認識していれば故意(悪意)を満たす。

将来の研究不正事件で被疑者が悪いと知らなかった、ルールを知らなかった、未熟だったからと言っても一切通用しない。小保方氏はこれらを理由に不正責任を逃れようとしたが、これを許すと誰でも同じ理由で責任を逃れようとするに決まっている。こういう不条理な言い分を斥けるためにも理研のこの判断は重要だったと思う。

なお、理研規定の改ざんの定義は『研究資料、試料、機器、過程に操作を加え、データや研究結果の変更や省略により、研究活動によって得られた結果等を真正でないものに加工すること[1]』であり、文科省の定義は「研究資料・機器・過程を変更する操作を行い、データ、研究活動によって得られた結果等を真正でないものに加工すること。[2]」とされている。少し文言が違うが全く同じ意味と考えてよい。小保方氏が「電気泳動画像の切り貼りや引き伸ばしはOct4陽性細胞(STAP細胞)でTCR再構成が確認できたという結果を偽っていないので改ざんでない。」と主張してもデータを真正でないものにしたことに変わりなく認められない。

結果が変わらなくても改ざんと判定されたものは、立石幸代元国立環境研究所ポスドク、柳澤純、村山明子元筑波大らの事件山大職員の事件などがある。これらはデータを一部流用・交換、恣意的な取捨選択の事例。結果を偽るのはもっと悪質で、例えばバルサルタン事件。基礎データを虚偽に改変、統計解析法は恣意的に選択しバルサルタンにとって嘘で有利な成果を発表。嘘の論文成果で宣伝しノバルティスファーマー社が巨額の金を騙し取る手法が昨年大問題となり報道されたのは記憶に新しい。

池田信夫氏によると経済学の研究発表でデータの恣意的カットの改ざんがあったという。確かに恣意的なデータ選択で虚偽の結果を発表したので改ざんだ。研究不正行為は正しく審査され、相当な処分がなければいけない。今回の理研の判断は今後の規範となるものだと思う。

参考
[1]研究論文の疑義に関する調査委員会による調査結果に対する不服申立ての審査結果について 理化学研究所  2014年5月8日
[2]文科省ガイドライン 2014.5.13閲覧

(発表日 2014-05-13 20:21:52)


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