最近杭打ちデータ流用が大きく報じられている。研究不正の分野でもしばしばデータ流用による捏造、改ざんは行われている。
私がデータ流用による論文捏造、改ざん事件として日本で最初に知った事件は上原亜希子(うえはら あきこ、写真1,写真2,写真3、写し1,写し2,写し3、2008年3月の日本細菌学会黒屋奨学賞授賞式)の大量データ流用事件[1]。上原亜希子は元東北大学歯学系助教、1969年5月生まれ、1996年3月鹿児島大学歯学部卒業、同一人物か不明だが上原亜希子という歯科医師が控訴審後に仙台であおい杜在宅歯科クリニック仙台中央を開院、時期や場所、資格からいって同一人物だと思うので、現在は仙台市内で在宅歯科のクリニックを経営していると推測する。
この事件は日本細菌学会から告発され、論文11編で捏造、改ざん、上原亜希子は懲戒解雇となり、上原の指導的立場だった高田春比古は停職3カ月、菅原俊二は停職1カ月となった。上原亜希子は大量のコピペ捏造のため、一部のウォッチャーからコピペクィーンと言われた。そのため今でもデータ流用による捏造、改ざんというと上原亜希子を思い出す人は少なくないかもしれない。上原亜希子はその後不服として提訴し約5年争ったが1、2審で敗訴。悪質で大量の捏造、改ざんと懲戒解雇が確定した。
上原亜希子は大量で明白なデータ流用を行ったため、故意に悪質な論文捏造を行ったのは明らかで、なぜ裁判で争い続けたのか全くわからない。小保方晴子も博士号取り消しに関して不服があるので、再提出の博士論文とデータを年度中に公表し、提訴も検討しているという。上原亜希子や小保方晴子の態度をみると、明らかに自分が悪いのに大学の取り扱いにとても納得できないから、裁判で争うという感じに見える。やめた方がいいと思う。
上原亜希子の大量データ流用は2009年4月21日に調査結果が公表され、上で述べたように当時は日本でデータ流用による捏造、改ざん発覚が珍しかったので、上原亜希子はコピペクィーンと言われた。上原亜希子を反面教師として同様の研究不正は起きないかもしれないと当時のウォッチャーは思ったかもしれないが、その後も琉球大学事件、独協医大事件、名古屋市立大事件、三重大事件、東大分生研事件、国立環境研究所30代女性研究者の事件、STAP細胞事件などで同様の不正が続発した。研究界はいくら悪質な不正が起きても対岸の火事に過ぎず、改善するつもりがない事を世間に示してしまった。
世間の人たちは捏造や改ざんは有利な結果を作るために行うので、その効果がないのにデータ流用することはないのではないかと思うかもしれない。しかし、上の研究者たちのデータ流用や杭打ちデータ流用も有利か結果を作るために流用したのではないものがいくつもある。それは実験がめんどくさいから、効率化、見栄えの良いものにしたいという事などが動機だろう。学術も建設も同じような事をやっている。
また、上原亜希子の事件で思ったのは、裁判官があまりに科学的判断力が乏しいという事。判決では上原敗訴だったが、1審では判決の前に仙台地裁が上原亜希子の弁明を認め、地位保全の仮処分等を行った。仙台地裁は明らかで大量のデータ流用に対し「データに類似性が認められたからといって、流用があったと結論付けることは早計」と不当な判断をした。素人さえわかる簡単で明白な判断ができない事に愕然とした。
裁判の問題も含めて、研究不正の問題はいろいろ改善していない。そのため、また同様の不正が続いていくのだろうか。
改善してほしい。
参考
[1]海外では上原亜希子以前にも例えばヘンドリック・シェーン事件でデータ流用が行われた事がある。上原亜希子以前にも同様の不正は国内外問わずあっただろう。