東大新聞によると東大医学系等の研究不正は5月31日までに本調査を終了したという。近く公表されるだろう。大野里奈らの論文捏造は現在も本調査中。
規定上はこの時期に本調査終了でも期間オーバーだが、これまでの調査例を考えると、論文22報の調査としては、少し早く終わった方だ。これくらいの調査期間なら全論文の調査はやっていないだろう。東大分生研事件は告発から約3年かかった。これは全論文の調査をやったが、それを考えても時間がかかり過ぎた。今回は1年かからずに本調査結果が出たので、東大分生研事件の調査はだらだらやっていたので長かったという要因もあったかもしれない。
東大医学系等の事件は門脇孝前病院長などの著名研究者が複数被告発者だった事やNEJMやNatureといった超一流誌の論文に疑義が指摘された事、疑義に信憑性があった事などの要因で告発された時にはスキャンダルとして大きく報じられた。マスコミと一定数の専門家は黒扱いだった。
しかし、これまでのJ-ADNIや小室一成氏の研究不正の扱いをみると、調査結果が出るまでわからないと思う。一般に高位者や多くの研究者が被告発者だと研究不正の認定基準が上がる。東大医学系等はなんとしても研究不正を認めない方向で処理しようとしていると思うので、調査結果がどうなったのかわからない。
もう一つ気になっているのは訂正や撤回が全く確認できない事だ。私が前に確認したのは1、2ヶ月前だが、大野里奈らの捏造以外訂正さえ発表されていなかった。これまでの研究不正事件では調査終了までに訂正や撤回が出された事が多かったが、この事件はそれと違う。
大野里奈らの捏造事件は現在も調査中で、こちらの方が分量からいってもっと早く終わっていい事件だ。規定期間内に終わるのが相当。主犯の大野里奈がUCデービス校を辞めて逃げてしまって連絡がとれないのかもしれない。責任著者の吉田進昭は不正を否定している。
ただ、大野里奈らの捏造事件は客観的に意図的加工が明らかで、学術誌も撤回公告でirregularities(不正行為)と公言し、大野里奈はUCデービス校を解雇又は辞職又は雇い止めとなったので、事実上不正を認めたといえる状態かもしれない。ただ、最後までわからない。
大野里奈らの捏造事件の方が他の事件に比べてもっと早く終わっていい事件だと思うが、大野里奈の離職、逃亡の影響があったのかもしれない。これまでも国立環境研究所30代女性研究者の事件などで同様の事があった。しかし、最終的には不正が公式認定された。
公正な調査が行われる事を期待する。