F東京医療保険大学らの統計教育論文の捏造が公表されていた。
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日本統計学会和文誌第36巻第2号pp.279-308に掲載された深澤・竹内・二宮『アジア・オセアニア諸国における初等中等統計教育カリキュラムの比較研究』におきまして,本学会が中心となって文部科学省および中央教育審議会に提出いたしました要望書に対して,冒頭部分に架空のプロジェクトを関係者に断り無く定義し,『プロジェクトが複数の学会との連携の下で提出した』という事実と相違する記述をしており,該当箇所(「はじめに」の冒頭の第一パラグラフとこのプロジェクトを定義した脚注:二宮智子執筆担当分)をお詫びとともに全削除をいたします.
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([1]より)
統計教育という分野があるようだ。Fの専門をみると統計教育の国際比較となっている。たぶんこの論文は統計学の教育系のものだろう。教育系の捏造は珍しい。平成19年10月に訂正公告が出されたので随分前だ[1]。原著論文は平成19年(2007年)3月公表なので、訂正はそれほど経たずに出たようだ[2]。教育系は研究者あたりの研究不正の発生率が最高かもしれないが、ほとんどは盗用だ。わずかだが捏造事案もあり、Kの捏造論文が撤回された。教育系の捏造は確認できる限りFらの件で2件目。架空のプロジェクトを無断定義して事実と異なる記載をしたのだから捏造だ[1]。架空のプロジェクトを作ってしまったというのはうっかりミスじゃないよね。やってもいないアンケート調査や実験の結果を論文に載せてしまったらうっかりミスの捏造ではないので、それと同様の事だろうか。
架空の記載の例だとO(国立環境研究所)は業績リスト上で存在しない架空のタイトルの論文を記載して重複発表による業績水増しをごまかす効果を出したという例があった。出版元に尋ねてもOが業績リストに掲載した文献は存在しないと回答され、本当は英語タイトルで共著なのに単著にし、英語文献なのに日本語文献とし、全く異なる架空のタイトルの文献を記載してしまうというのはうっかりミスではない。
架空の事実の記載は捏造である。どの事案も改善が必要だ。
参考
[1]日本統計学会和文誌の訂正公告、トップ、2019年10月28日閲覧
[2]深澤弘美、竹内光悦、二宮智子 日本統計学会誌 36(2), 279-308, 2007-03-01、論文、