最近某匿名掲示板を見ても研究不正の指摘がない。Oさんの事件以降何もない。思えば昨年もK氏、M氏、H氏、M氏、Y氏らの疑義がディオバン事件をきっかけに書き込まれたくらいで、特に何も指摘はない。これはいいことだと思う。研究不正はあるが単に指摘されていないだけかもしれない。思えばなぜ匿名掲示板に研究不正の指摘が書き込まれるかといえば、普通に告発しても圧殺されたり、様々な嫌がらせを受けるだけできちんと取り扱われないことが珍しくないからだ。文科省は来年度から研究公正推進局を作るがORIのような調査は行わず、告発受付の窓口(注)の新設もない[1]。内部告発が捨身になる問題の改善はなかった(関連1,関連2)。
このあたりの改善はどうなるのでしょうか?自浄作用は理想論と言われています[2]。
参考
[1]現行でも文部科学省などに研究不正の受け付け窓口はあります。しかし提出書類を転送するだけで、全く意味がないです。きちんと拘束力を持って告発を受理したり、相談できる部署が必要です。
[2]片瀬久美子氏のブログで日本学術振興会職員が2013年12月18日付で『文部科学省において「研究活動の不正行為への対応のガイドライン」の見直しの検討が開始され、年度内には改正される予定となっておりますので、それを受けて対応することになります。』(片瀬久美子氏のブログより)と回答し、片瀬氏が「文部科学省において「研究活動の不正行為への対応のガイドライン」の見直しの検討が開始され、年度内に不正調査に期限を設けることに改正される予定とのことです。」(片瀬氏のブログより)
文部科学省の「研究活動の不正行為への対応のガイドライン」は2014年度になっても全く改正されていません(関連)。2014年度から文科省ガイドラインが改正されたというのは誤りです。「研究機関における公的研究費の管理・監査のガイドライン(実施基準)」(関連)が改正され、報告遅延に間接経費削減などの罰則が科されるようになったのは確かですが、平成26年度以降の競争的資金しか対象でなく(関連)、それ以前の競争的資金に係る不正調査報告の遅延は何も罰則がありません。
だから、森直樹琉球大教授らの捏造などの不正行為が発覚から4年以上経っても報告されず、現在も罰則を逃れ不当に科研費を受けているのを放置するしかないという非常に不条理な事が発生しています。これに関して学術振興会はQ.「B教授は2013年度の基盤研究(*)を得ていますが、特に問題はないのでしょうか? 」A.「交付制限の措置(ペナルティ)については、大学からの報告書を受けて、当会における検討委員会で決定し、有効となりますので、現時点では規程等に反しているということにはなりません。」(Q.A.ともに片瀬氏のブログより)と回答。規程に反しなければ何をやってもいいというわけではないでしょう。不正をした者が大学からの報告遅延により不当に罰則を逃れて科研費を受けている状況を監督機関である学振がこのように考えるのは非常に無責任で考えが間違っていると思います。Q.「日本学術振興会では今後何年先までも最終報告の提出を待つ予定でしょうか?」A.「現時点では、報告の期限について具体的に定めたものがなく、その規模、内容により相当の時間を要することも考えられますので、できるだけ早く提出するよう依頼しているところです。何年先までも待つということではありません。」(Q.A.ともに片瀬氏のブログより)と学振は回答したが、態度から判断して虚偽回答といわざるを得ない。文科省もなぜ改善しないのか?
文科省や学振は問題を研究機関に丸投げし、研究機関がどれだけ不条理で悪いことやったとしてもそれで構わないと本気で考えているように思う。これでは全くだめだろう。森氏の事例も改正された管理・監査ガイドラインを適用し、間接経費削減などの罰則をかすべきだ。そうでなければいつまでも琉球大や長崎大学は報告しないし、森氏は不当に罰則を逃れる。
平成26年以降の競争的資金に係る研究にしか罰則を適用できないのは遡及適用が不適切だというのが理由だろう。確かにすでに済んだ調査報告の遅延に対してまで罰則をかすのはまずい。例えば、平成22年に告発され平成25年に調査報告された案件に罰則を適用するのはまずいだろう。しかし、新管理・監査ガイドラインができても依然として報告遅延する機関は規則成立後に違反行為をしているのだから遡及適用の不都合はないし、平成26年以降と以前で継続した報告遅延を区別する理由はない。
だから、平成26年4月1日以前の競争的資金に係る不正の調査も同日以降も継続して報告遅延している案件には間接経費削減などの罰則をかすべきだ。そうでないと「不正があっても調査報告しなければ罰則を逃れられる。文科省や学振もそれを認めている。」という森直樹事件の琉球大学のような非常に不条理な事が改善できなくなる。