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研究機関の研究不正規程の形骸化について

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各研究機関は文科省ガイドライン等を受けて、研究不正の対応規程を制定している。しかし、この規程は研究機関の任意性に任せると恣意的に運用され、きちんと機能しない事も多い。

例えば研究不正があった時の不正行為者の氏名公表の規程が形骸化している。文科省ガイドラインや各研究機関の規程では不正行為者の氏名を公表するのが原則になっている。しかし、不正行為者が既に辞めているなどの理由で公表しない研究機関が多く形骸化している。

氏名公表は誹謗中傷などの名誉棄損を招き、ネットの発達で記録が半永久的に残るために、それらを防ぎたいという考えがあるのかもしれない。文科省ガイドラインは米国政府の規程等をもとに作成され、氏名公表が原則になっていたから、それに合わせて氏名公表の規程になったが、米国政府の規定はネットやSNSなどがなかった時代にできたもので、現在でも同様の規程を続けるのは問題があると主張する人もいる。要するに氏名公表を避ける理由は不正行為者や研究機関の名誉棄損を避けたいという事が主たる理由のようだ。それはいいと思う。

それならいっそガイドラインを改定して氏名非公表を原則にしたらいいのではないか。・・・とも思うのだが、よく考えると研究発表をする以上は、このような取扱いも難しいのではないかと思う。

氏名公表より重要な事は調査結果をきちんと公表することだ。どの論文でどのような不正行為や問題があったのかをきちんと伝え、学術コミュニティや社会の発展に支障が出ないようにする事や調査の透明性を確保する事が重要だ。それらが実現しなければ、健全な発展が害され問題である。

また研究発表は必ず実名で行うのだから、調査結果の公表で氏名を明らかにしても仕方がない。だから、調査結果の公表等で不正行為者の氏名を公表しないのは余り意味がないのではないか。

また、論文の二重投稿等の不正は撤回公告でも容赦なく公表され、これはどの国のどの分野の学術誌でも同様の扱いで、ネットでも当然公表されている。これはずっと前から同じだ。

氏名公表規程の形骸化ならまだいい方で、本質的に重要な規程でも違反している例があり、これは非常に問題ではないか。東京農工大東北学院大は調査結果を公表しなかった。これでは学術や社会の健全な発展や透明性に支障が出るので不適切だ。

大阪大学・国立環境研究所は顕名通報でも規程に違反して調査しなかった。これは明確な規程違反であり握り潰しであって、非常に問題がある。東北大学元学長事件など同様の握り潰しは他にもたくさんあるだろう。このような問題は公正な調査のために本質的に重要な規程さえ蔑ろにするもので、非常に不適切である。

最近大量訂正のあった論文に対して大阪大学が調査する事が報道されたが、この問題は私が大量訂正の公表後に国循に告発したのに調査せず、他に不正行為が認定されてから調査を開始したという事例で、告発の握り潰しや不正行為の隠蔽として非常に問題がある事例だ

結局、研究機関の任意性に任せていると、でたらめに扱う事も珍しくない。規程の形骸化はこれが主要因だろう。これは研究機関に限った事ではなく、学会や出版側も同様で、不正な大量訂正を掲載したネイチャーやPNAS誌など出版倫理を守っていない事もある。

最近は元学術会議会長が学術会議会員の任命に対して見解を述べて報道されたが、元会長は元日本計画行政学会会長であり、業績水増しを指摘された。元会長は計画行政学会会長に在任している間に大量訂正のあった論文の不正を問題視されたのに、何も対応しなかった前科がある。この大量訂正理由を虚偽記載して結論を書き換え、全面的に訂正する悪質なものであったが、なぜか計画行政学会は、このような不正な訂正さえ公表してしまっている。虚偽の理由を記載して訂正を行う事が不正行為である事は言うまでもなく言語道断で、結論の書き換えや全面訂正など出版倫理に違反しできるはずがなく、必ず撤回というのは研究者の常識ともいえるが、そういう非常に基本的なことさえ守れない学会や研究者も存在する。そういう学会の元会長が元学術会議会長でSTAP細胞事件で研究倫理が非常に強く問題視された時も研究者の代表として研究倫理を主張していた。

結論が間違っていたら撤回になるのは通常誰からも異論は出ないはずであるが、なぜこのような扱いが起きるのか。結局のところ、不正は不都合だから握りつぶす、隠蔽するという研究者や研究機関、出版社の考えに原因があるのだろう。

世間では学術会議会員の任命をめぐって、学問の自由の侵害などという人もいるが、研究機関の任意性に任せると非常にでたらめで不正な対応も多い。

研究不正の規程で本質的に重要な告発の受理や不正行為の調査や有無の判断に対する規程さえ形骸化するようになったら、非常にまずいので、第三者機関などを作ったり拘束力のある規程を作る事が重要だ。


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