NHKBSプレミアムで日曜日午後9時から奇皇后が放送されている。14世紀に高麗から貢女として元に渡り皇后になった実在の女性奇皇后の愛と闘いを描いた歴史ドラマ。日本では2014年8月3日から放送開始、韓国では2013年10月28日~2014年4月29日まで放送された。韓国での平均視聴率は21.9%、最高視聴率は第29.2%だったらしい。韓国の番組公式サイト。私は全話鑑賞した。
以下ネタバレになるので読みたくない人は読まないでほしいが、私は最初のうちは主人公スンニャンと高麗王ワンユ、元皇帝タファンのラブストーリーが進んでいくのかと思っていて、最初はすごく面白いドラマだと思っていた。放送時間の1時間がすぐに過ぎる感じだった。しかし見続けるとネガティブな内容が多すぎて不快に感じる事も多かった。だから私の面白さの評価は中程度。このドラマは中盤の最後であるヨンチョル丞相一派の抹殺までスンニャンが何度も復讐のために活動するという感じで、最初は母を殺したタンギセや元に復讐するために男になりすまし武術を学び活動、その後裏切って父を死なせたタファンに復讐するためにムスリ(雑用係とNHKは訳している)として活動、才人パクオジンや高麗出身のノ尚宮などの家臣女性たちを皆殺しにし、スンニャンの子ピョル(発音を聞くとピョラと聞こえる。後のマハ第一皇子)と死別れさせられた皇后タナシルリらに復讐するために活動(ピョルとの死別は誤解で後にマハがピョルだとスンニャンが気づく)。強い恨みによる復讐のためにずっとがんばっていた。いわゆる臥薪嘗胆。
ヨンチョル一派を抹殺したクーデター後はスンニャンの子アユルシリダラ第二皇子(実在の人物。北元第2代皇帝。ドラマでは皇太子から北元皇帝に。)を守るために新丞相のペガン、皇太后、パヤン皇后などと対決。様々な陰謀や計略を行って人を騙し、罠で陥れ、抹殺していった。最終的にスンニャンは皇后となり実質的な最高権力者で、彼女に逆らう者、仇をなす者は悉く抹殺された。暗殺、拷問などもしばしば登場した。
私は主人公スンニャンを非常に恐ろしい人物だと思った。彼女は多芸で、美しく、武術、踊り、裁縫、料理、演奏などが優れている。特に知能がかなり高く、洞察力や思考力が優れていた。後宮の選抜第三試験(学識試験)では他の候補者を抑えて難問を一人だけ解き満点、タナシルリの試験を見抜いたり、ヨンチョルの秘密資金の場所も師匠タルタルより先に見つけて出し抜いた。様々な計略が成功したのも知能の高さと行動力ゆえだ。しかしその能力を悪用し復讐、計略などで人を騙したり、罠にはめて陥れたり、復讐のために様々な人を死刑や暗殺などで死に追いやった。大明殿でペガンを家臣たちに暗殺させる時も「殺せ!」と命令し自分は悠長にお茶を飲んでいた。非常に冷酷な女性。上で述べたように最終的には反対勢力や仇をなす者たちを悉く抹殺し皇后に昇りつめ実質的最高権力者となった。このような様を見て非常に恐ろしい人物だと思った。
このドラマは復讐、計略、欺瞞、暗殺、拷問、殺戮といったネガティブな事がひたすら繰り返され、見ていて不快だった。出演した俳優や女優のルックスはとても優れていて、その点は良かったと思うが、これほどネガティブな要素が多いドラマは日本でないと思う。水戸黄門や大岡越前、遠山の金さん等の時代劇に悪役はいるが、大概親孝行者等のいい人がいて主人公たちが悪役を懲らしめて善人を救うとか人情のような内容が描かれるし、大河ドラマでもネガティブな要素が多い内容になっていない。相手役のタファンもほぼ一貫して非常にダメな男で、皇太后やタナシルリ、パヤン、ヨンファ、ソ尚宮など多くの人物は権力や利益などのために平気で人を陥れたり殺害する非常に悪質な人物だった。登場人物は悪人が多かったと思う。
韓国での平均視聴率は21.9%で、日本で言えば多分約11%くらいだと思う[1]。視聴率の点ではまあまあ成功したドラマと言える。ドラマは大衆受けする内容になっている事が多いが、これほどネガティブな要素が多い番組が高視聴率になるのに少し驚く。韓国人はこういう内容が好きな人が多いのか?私は韓国の国民性は全くわからないが、日本人と韓国人の好みは全く違うのだろう。韓国は昔日本、元などの属国だったし、唐、清などと冊封関係だった。大清皇帝功徳碑の建立など屈辱的な仕打ちを受けた事もある。そういう影響もあるのか?
以上、奇皇后の感想。
韓国は他の国に支配されている時期がある程度長かったかもしれないが、現在は経済発展し自動車産業などが盛んで韓国ドラマ等が海外でよく放送されている[2]。野球のオリンピック、キムヨナ選手などスポーツ方面でも活躍している。今後もがんばってほしいと思う。
参考
[1]韓国では地上波キー局が3つしかなく競合が少ないため日本より高視聴率が出やすいらしい。韓国の視聴率30%は日本の視聴率14~15%くらいという見解があるので、約半分と考えると奇皇后の平均視聴率は日本で言う約11%くらいだと思う。単純計算でこのように言うのが妥当ではないという見解はもちろんあるだろう。視聴率という点ではまあまあの成功作と言えるのは間違いない。
[2]韓国ドラマ等が海外で放送されている主な理由は放送権が安いから。日本では新しいドラマを作るのに比べて放送権購入は1/5~1/10くらいの費用で済むし、日本の人気ドラマを再放送するより安く済むことがある。再放送では著作権関係の手続きがめんどくさいという事情もあり、放送権を買って放送した方が安上がりという事情がある。現在は円高だし尚更都合がいい。