O 30代女性研究者は某有名大学にAO入試で入学し、博士号を取得した。しかし、基礎的な研究能力や実績が欠けていたのに学振特別研究員やPI等の地位に就いた。その事に対して世間から猛烈な批判があった。その中でO 30代女性研究者がAO入試で大学に入学した事が研究不正の原因の一つだと主張する人たちがいた。私は大学入試の学力と研究不正はほとんど関係ないと思う。研究技能は主に大学以降の教育や努力で身につくもので、大学入試の時点の学力はあまり関係ない。
例えば、 北川浩史は東大医学部医学科卒で、大学受験では最高学力層だっただろう。しかし、悪質な研究不正を数多く実行し、不正な方法で博士号を取得、群馬大学教授となった。「北川氏は群馬大教授だった約5年間、実質的に論文を1本も書かなかった。」(毎日新聞 2015.1.23、別サイト) いくら受験勉強ができて、国立大学の教授になれても、そういう人物は劣等と言わざるを得ない。なぜ群馬大の教授になれたのか。
研究不正行為者には、北川浩史に限らず一般入試で難関大学に進学した人たちがたくさんいる。だから、AO・推薦入試組が一般入試組より学力が低くて研究不正をしやすいという傾向はないと思う。最近は東大、京大すら推薦やAO入試を導入する動きだが、試験一辺倒よりも優秀な人物を輩出できると判断したのだろう。そちらの方が世間からのニーズにあっているという判断もあるのかもしれない。
私の知人は慶應のSFC出身で民間研究所で優れた実績をたくさん出し、大活躍している。慶應SFCは難関だが学力試験のウェートが低く、その他の能力を重視して選抜される。世間ではそれを悪く見なす人たちもたくさんいるが、この人が現在優れた実績を出しているのは、たぶんコミュニケーション力、社交性等で他の人たちとの交流を通して自分の実力を伸ばせたからだろう。そういう様をみると慶應のSFCの入試も良いと思う。
慶應はSFC創設で、学力よりも他の点を重視した入試で一流大学への門戸を開いた事で経営的に成功した。受験勉強をやりたくないが他の能力のある人たちのニーズに応えて、うまく学生を獲得した。入試選抜の点で慶應SFCを低学力で悪いと見下している人たちがいるが、人は成果で評価されるべきで、難しい試験を突破した事など何の成果でもないので、こういう考えは余り関心しない。
最近、司法試験や法科大学院をめぐる法曹界、官庁、裁判所等の問題を執筆した。記事1、記事2。この問題も上の事と共通する部分がある。官庁、法曹界、裁判所等は司法試験は難しくあるべきで、大卒後5,6年ひたすら必死の勉強をしないと身につかないような法的学識かそれに近い水準を新司法試験に求め、簡単にするつもりは全くない。それは表向きは国民の基本的人権を擁護するためには試験は厳しくする必要があると主張するのだろうが、裏では試験エリート意識があるのかもしれない。官庁等が司法試験を非常に難しくしてるのに、試験勉強に偏らず、プロセス、実務等の教育を重視した法科大学院制度に固執しているのは矛盾で、どんな法曹を育てたいのかわからないと述べたが、早いうちに方針を決めるべきだ。
私は前も述べたように、非常に難しい試験に拘る必要は全くないと思う。上の知人のように優れた人物はたくさん輩出できる。医学や米国の法科大学院等は非常に難しい試験でなくても優秀な人物をたくさん輩出できている。
そういう点を大学入試や司法試験等でも考えた方がいいかもしれない。